揺さぶられ2010年、ありがとう。
大晦日。
起きてみれば窓の外は雪がちらついていた。
家中モップがけをしたり、黒豆を煮るのを手伝う合間合間に、
今年最後の小説、「八日目の蝉」をさっき読み終わった。
角田さんの文章の書き方はいつも等身大で、そのまま読み手の胸を打ってくるように思う。
不倫相手の子供を誘拐して逃げるという許されない行為、罪を犯した女。
それでも、
逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるのだろうか。
これから私があなたに全部あげる。今まで奪ってきたものを全部返してあげる。海も山も、春の花も冬の雪も。びっくりするほど大きい象も飼い主をずっと待つ犬も。かなしい結末の童話もため息の出るような美しい音楽も。
女が子供と引き換えに本当に全て失ってでも逃げて、子供とどうか1日でも長く一緒にいさせてほしいと祈る場面では、心が揺り動かされて、どうか逃げのびて、という気持ちにならざるをえなかった。
血のつながりだけを親子というんじゃないのかもと思わせてくれる話。
持ってるものの当然さと、実はその大切さを考えさせてくれる話。
随分長い間集中して小説を読んでいたせいか、リビングのヒーターの前に座り続けていたせいか、連休がはじまってすっかり正月モードに入ってしまったからか、頭がぼんやりする。
大晦日。
2010年、この年は、私にとって一文字で表すと、『揺』という文字かもしれない。
かけがえのない人達との出会いや再会や別れに、
近くにいてくれている人達からの言動に、
目の当たりにした「死」に、
美しい海や夕日に、
いろんな匂い、いろんな感触に。
良くも悪くも、何度も何度も心が揺り動かされる1年だった。
その揺さぶられるできごとに、感動することも、戸惑うことも、ただ嬉しいことも、泣けてしかたがないときもあったけれど、
1年の終わりに、やっぱりよく泣けて笑えた時間を過ごせたことを嬉しく思う。
キッチンからは正月の匂いが漂ってくる。
母が年越し蕎麦を作りながら、ここぞとばかりいろいろ話しかけてくる。
それを適当に聞き流しながら私はこれを書いている。
今年もこんな風に締めくくれて幸せ。
2010年も、随分いろんな人達に助けられました。
ありがとう。
良いお年を!
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